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M&Aが急増している背景

M&Aが急増している背景

1990年代初頭、バブル崩壊後の日本企業は株式が低迷し、多くの投資ファンドの間で、経営不振の会社の株式や債券を買い取り、再生を果たしてから売却するというM&A投資が盛んに行われました。

こうした事業者は「ハゲタカファンド」とも呼ばれました。

やがて、1997年の独占禁止法の改正を始め、M&Aに関連する法改正が相次いだことも手伝い、2006年にはその件数はピークを迎えます。

その後、リーマンショックや東日本大震災により、いったんM&Aは低迷しますが、2010年から現在に至るまでに再び活発になり、2017年には過去最高の件数となりました。

この傾向は2018年になっても継続、加速しているようです。

しかしながら、M&Aの件数が増加する背景は1990年代初頭とは異なるものがあります。

また、成約金額は件数に応じて必ずしも増加しているわけではありません。(グラフ1・2参照)

<グラフ1>1985年以降のマーケット別M&A件数の推移

<グラフ2>1985年以降のマーケット別M&A金額の推移

(注)IN-IN:日本企業同士のM&A  IN-OUT:日本企業による外国企業へのM&A  OUT-IN:外国企業による日本企業へのM&A
参照:MARR Online https://www.marr.jp/mainfo/graph/

そこで、近年のM&Aがどのような傾向で、どのような背景で行われているのかを考えてみたいと思います。

近年のM&Aの傾向

小規模案件が多く、大規模案件は少ない

「マーケット別M&A件数の推移」のグラフを見ると、リーマンショック以降、M&Aの全体の件数は増加しています。

その中でもIN-IN(国内同士)案件の増加が著しく、IN-OUT(国内の会社が海外の会社を買収する)やOUT-IN(海外の会社が国内の会社を買収する)の案件にはそれほど大きな変化はありません。

ところが、2016年から2017年にかけて、全体的な成約金額と、件数では増加していたIN-IN案件の成約金額も、ともに減少しています。

このことから、IN-IN案件自体の数は増加していても、大型の案件が減少して、中小規模の案件が増加しているということがわかります。

逆に、IN-OUTでは2014年以降大型の案件が増えています。

つまり、国内市場の成長が飽和状態となりつつあり、成長しようとする企業は海外に目を向けているということになります。

とは言え、IN-OUT、OUT-INのクロスボーダー(一方が外国の企業である取引)案件は、M&Aを行った結果がうまくいかないケースも多くあるようです。

近年の日本でM&Aが急増している背景

中小企業の後継者不在による事業売却

近年、中小企業において、高齢化する経営者の後継者不在による事業の売却が増加しています。

2017年の中小企業庁の報告によれば、中小企業の経営者は、現在、66歳が最も多く、2022年までに30万人以上が70歳になるにもかかわらず、日本企業の3分の1にあたる127万社が、後継者未定とのことです。

少子化により、後継者となる子供がいない、あるいはいても後を継がないケースなどが多く、コストをかけて廃業するよりは、事業を継承してもらい、売却益を得ることができるM&Aによる譲渡を選ぶケースが増えているようです。

M&Aによる譲渡のほうが、従業員の雇用や取引先を守ることもできますし、事業をさらに成長させることができる可能性を考えるとより、よい選択肢とも考えられます。

ただし、投資ファンドなどによる買収の場合、ある程度の利益が出た段階で再び売却されることが前提になりますので、そこは理解しておく必要があります。

金融機関の積極的な支援

現在はマイナス金利であることも手伝い、銀行などの金融機関は、M&Aのための資金を積極的に貸し出しています。

また、2017年11月には、野村ホールディングスが事業再生や継承に取り組む企業に、1000億円規模のファンドを設立して投資することを発表しました。

こうした金融機関の後ろ盾が、M&Aの促進を後押ししていると思われます。

急速に変化するIT環境への対応

IT環境の急速な変化により、各企業は時代に乗り遅れないために、システムやデータのデジタル化、クラウド化、今後ますます広がって行くIoTやAIへの対応を行う必要が出てきました。

コストや人件費の削減、会社が成長するため、そして、ライバルに勝つためには、できるだけ早い対応が求められ、自社で一から対応を行うよりも、専門業者との積極的な資本提携を選ぶというケースが増えてきたことも、M&A急増の一因となっています。

M&Aが一般化してきた

M&Aの小規模案件の中には、公表されていない中小零細企業、個人投資家レベルでのM&A案件も含まれます。

これには、いつでも誰でも閲覧できるM&Aマッチングサイトや、M&Aコンサルティング会社の存在が大きく関わっていると思われます。

個人が起業する場合、一から事業を立ち上げるのはかなりの労力を必要としますが、すでに実績のある事業を買い取り、運営して行くことができれば、買い取った当日から利益を得ることも可能です。

このように、売却案件を簡単に探すことができるようになったことも、中小規模のM&Aの増加につながっています。

そして、売却側の意識も変わって来ました。

かつてM&Aというと、「身売り・乗っ取り」というイメージがありましたが、現在は経営手段の一つとして理解され、成長企業の傘下に入ることによる事業拡大、雇用安定をメリットと考え、積極的に売却を行う中小企業も増えています。

また、中小企業の後継者問題などは、メディアでも取り上げられ、M&Aの存在が幅広く認知されたことで、これまで「後継者不在=廃業」と考えていた経営者にも、M&Aという選択肢もあるという考え方が浸透してきたようです。