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M&Aによる売り手側と買い手側のメリット・デメリットとは?

M&Aというと一昔前までは、乗っ取り、身売り、というようなイメージが強かったのですが、最近では事業継承のための一つの手段として捉える向きも多くなってきました。

そして、ここ数年は、特に中小企業の案件は増加の一途をたどっています。

インターネットの普及、M&Aマッチングサイトの登場で、個人や中小企業でもM&A案件を探すことができるようになったこともその一因と考えられます。

M&Aを行うにはメリットも多いのですが、デメリットもありますので、検討する際には、これらをしっかり把握したうえで行うことをお勧めします。

M&Aのメリット

買い手側も売り手側もWin-winな関係を築くことで、その後の経営が安定しやすくなります。ですから、お互いのメリットやデメリットも十分に理解しておく必要があります。

株式譲渡、事業譲渡、第三者割当、会社分割などその手法によっても、メリットやデメリットは異なります。

中小企業M&Aでは、主に株式譲渡が行われますが、ここでは株式譲渡と事業譲渡についてのメリットやデメリットをご紹介します。

買い手側のメリット

事業規模の拡大

売り手側の技術、人材だけでなく、店舗、設備、顧客、流通網などを譲り受けることにより、事業規模を拡大することができます。

事業規模の拡大が業界のシェア拡大につながることもあります。

事業の多角化

M&Aにより買収した企業が、同業種でも、異なる分野である場合があります。例えば、レディスウエアを製作販売している企業が、メンズウエアを製作販売している企業を買収することによって、新しい分野を開拓することができます。

異業種への参入

買収した企業が、全く異なる業種という場合もあります。つまり、新規事業に参入するという形になります。

例えば、家具を販売している会社が、人材派遣業の会社を買収するというようなケースです。

新規事業に参入するには、通常であれば、膨大な時間やリスクが伴います。しかし、人材や設備、ノウハウは譲り受けているため、時間やリスクを大幅に減らすことができます。

新しい技術の導入

事業やシェアを拡大することの他にも、買収した会社の技術を導入することで、弱かった部署を強化することもできます。

例えば、これまでIT化が遅れていた事業が新しい技術を導入することによって、効率よく作業を行うことができるようになり、人件費を削ることができる、納期を早めることができる、というようなことも考えられます。

手法別に見たメリット

株式譲渡:手続きがシンプルで、売却会社の資産や顧客もそのまま引き継ぐことができる。譲渡益の税率が低い。

事業譲渡:簿外債務は引き継がない。事業や従業員を選別して譲り受けることも可能。

売り手側のメリット

後継者不在でも事業を継承可能

近年、中小企業の経営者が高齢化する中、事業を継承する後継者が不在というケースが増えてきています。

子どもがいない、または子供がいる場合でも後を継がない、経営を任せられる従業員がいない、債務があるなどの事情があっても、優良企業に買い取ってもらうことにより、技術や設備、人材を守ることができます。

従業員の雇用の安定

もし、会社が倒産ということになれば、長年、一緒に働いてきた従業員は路頭に迷うことになります。

会社を売却することで、優良企業の元で従業員が力を発揮し、待遇面でも現在より優遇されるのであれば、従業員にとっても大きなメリットとなります。

売却益を得る

会社が倒産して、設備などを二束三文で売却するよりも、M&Aにより、技術、人材、取引先などを含めた会社の正当な価値で売却することができれば、経営者にとってもより大きな利益を得ることができます。

手法別に見たメリット

株式譲渡:手続きがシンプルで、負の資産も譲渡先に引き継いでもらう可能性もある。

事業譲渡:事業や従業員を部分的な譲渡が可能。優良事業や従業員は残しておける可能性もある。

M&Aのデメリット(リスク)

M&Aを行ったからと言って、必ずしもうまくいくことばかりではありません。M&Aを検討する前に、十分なデメリットやリスクを念頭に置いた上で、交渉を進めることが大切です。

買い手側のデメリット(リスク)

投資に見合う効果が発揮されない

会社を買収するに当たり、一定の効果を見込んで買収したにもかかわらず、それに相当する効果が見込めないということもあります。

その場合、設備や人材を維持する経費がかかるのみとなり、赤字が膨らんでいくばかりになることもあります。

買収先従業員との軋轢

買収先の従業員が元の経営者をとても慕っている場合や、企業文化が異なるために、習慣や考え方が合わず、軋轢が生じ、買収先の従業員のモチベーションが下がってしまうこともあります。

デューデリジェンス後にネガティブな事実が判明することも

入念なデューデリジェンスを行っていても、後になって、巨額の負債が隠れていた、犯罪に加担していた、というようなネガティブな事実が発覚することがあります。

損害賠償を請求できるケースであればまだいいのですが、できないケースの場合は、買収によって経営を圧迫してしまうこともあります。

有能な人材や技術の流出

買収先の有能や人材が、技術ごと他社に引き抜かれる、または退職するようなことがあれば、買収には大きなメリットはなかったということになります。

手法別に見たデメリット

株式譲渡:買収会社の負の資産、偶発債務、簿外債務なども引き継がなくてはならない。

事業譲渡:手続きが煩雑。取引先との契約が引き継げない場合もある。免許や認可は取り直しが必要。

売り手側のデメリット(リスク)

買収完了後、条件が変更されることも

従業員の雇用について、交渉中に決めた条件が買収後に変更されてしまうというケースもあります。

例えば、閑職に追いやられてしまう、リストラの対象とされる、減給となるなどの待遇悪化されてしまう場合もあるということです。

期待していた価格で売却できない

売却交渉の際、デューデリジェンスの結果、期待していたより大幅に安い価格を提示されることがあります。

もちろん条件に合わなければ断ればいいのですが、何度別の会社と交渉しても同じ結果になる場合、その価格を受け入れるしかありません。

手法別に見たデメリット

株式譲渡:持ち株比率によっては経営権を失うこともある。最初からどこまで譲渡するのかを見極めておく必要がある。

事業譲渡:手続きが煩雑。取引先との契約が引き継げない場合もあるため、取引継続を望む取引先に迷惑がかかることもある。

M&Aによるリスクを避けるには?

情報開示は包み隠さず

売り手側は、すべての情報を包み隠さず開示することが大切です。

後になって、ネガティブな情報が発覚するようなことがあれば、残された従業員の立場も悪くなりますし、訴訟問題に発展する恐れもあります。

買い手側は、デューデリジェンスを慎重に行うようにします。

友好的関係を作る

売却側は、買収後に従業員が不当な扱いを受けないために、買収側は、従業員や技術が外に流出してしまうのを防ぐために、お互い敵対的な関係ではなく友好的な関係を築いておくことが大切です。

仲介業者は独立系を選ぶ

M&Aを行う際は、煩雑な手続きや面倒を避けるためにも仲介業者を立てる方が賢明です。

その際、公正な判断をしてもらえるよう、仲介業者は相手側との癒着がないことを確認して、完全に独立系の会社を選ぶことが大切です。

まとめ

近年、中小企業のM&A案件が増え続けています。

その背景には中小企業経営者の後継者問題があり、また、インターネットの普及、国や金融機関の支援も後押しして、M&Aを行いやすくなったことがあります。

M&Aは、一昔前のように、「乗っ取り、身売り」というネガティブなイメージは減ったものの、メリットばかりではありません。

M&Aを検討する際は、メリットやデメリットをしっかり把握して、本当に行う価値があるのかを見極めることが大切です。

[記事公開日]2019.02.28
[ライター]natsu